学校は「避難所」でもある – 災害時にバリアフリーが命を守る理由
地震や水害が起きたとき、多くの地域で最初に避難場所となるのが、近隣の小中学校です。普段は子どもたちが学ぶ場所である校舎や体育館が、災害時には高齢者・障害のある方・けがをした人まで、あらゆる住民を受け入れる「避難所」に切り替わります。
しかし、学校という建物は本来「児童・生徒が使う場所」として設計されており、避難所として使われることを前提にしたバリアフリー対応が十分でないケースが少なくありません。今回は、学校が避難所になったときに実際にどのような問題が起きているのかを整理し、対策としての段差解消機・車椅子用階段昇降機についてご紹介します。
避難所となった学校で、実際に起きている問題
1. 体育館へ入るまでの段差・階段
多くの学校では、体育館や昇降口に数段の段差があります。普段の生活では問題にならない段差でも、車椅子利用者や歩行が不安定な高齢者にとっては、避難所にすら入れないという事態につながります。
2. 教室棟の上層階が使えない
体育館だけでは避難者を収容しきれず、教室が避難スペースとして開放されることもあります。しかし多くの校舎にはエレベーターがなく、2階・3階の教室は車椅子利用者や足の不自由な方にとって、そもそも使うことができない場所になってしまいます。
3. トイレへのアクセス困難
避難所生活において最も切実な問題の一つがトイレです。多目的トイレが整備されていない学校では、車椅子利用者が校舎内を移動できたとしても、トイレの利用自体が難しく、体調悪化や脱水症状のリスクにつながることもあります。
4. 支援者・介助者の人手不足
平時であれば教職員や家族が介助できますが、災害直後の混乱した状況では、避難所運営に関わる人手そのものが限られています。段差や階段がある構造では、車椅子を持ち上げて移動させるといった介助が必要になり、介助者2〜3人がかりの対応が必要になることもあります。これは介助者側の負担・けがのリスクにもつながります。
5. 「避難所に行けない」という選択にすらつながる
段差や階段の存在を事前に知っている当事者やその家族は、「どうせ行けない」「迷惑になる」という理由で、そもそも避難所に行くことをあきらめてしまうケースがあります。これは在宅避難のリスク(停電・断水・孤立)を高めることにもなり、災害弱者がさらに支援から遠ざかってしまう構造的な問題です。
バリアフリー化が「命を守る」ことに直結する理由
学校のバリアフリー化は、平時には通学する子どもたちのための整備という側面が強調されがちですが、災害時には避難できるかどうか、避難所で安全に過ごせるかどうかという、命に関わる問題に直結します。
- 避難所にたどり着けるかどうか
- 避難所の中で安全に移動できるかどうか
- トイレなどの生活動作を継続できるかどうか
- 介助する側の負担・二次被害を防げるかどうか
これらはすべて、平時のバリアフリー対応の延長線上にある課題です。しかし、校舎全体を大規模改修してエレベーターを新設するには、時間も費用もかかり、災害への備えとして今すぐ実現するのは簡単ではありません。
工事不要で導入できる「段差解消機」「車椅子用階段昇降機」という選択
そこで注目されているのが、大規模な工事を必要とせずに設置できる段差解消機と車椅子用階段昇降機です。
段差解消機とは



昇降口や体育館の入口など、数段程度の段差をリフトのように昇降させて解消する機器です。車椅子に乗ったまま段差を越えられるため、避難所の入口で「入れない」という事態そのものを防ぐことができます。工事を伴わず設置できるタイプもあり、必要な場所に比較的短期間で導入できる点が特徴です。
車椅子用階段昇降機とは


階段に沿って車椅子ごと昇降できる機器で、上層階の教室や渡り廊下の階段など、エレベーターがない場所での移動を可能にします。介助者1名程度の操作で昇降できるタイプもあり、災害時の限られた人手でも運用しやすいという利点があります。
これらの機器があることで、
- 避難所の入口で足止めされることがなくなる
- 上層階の教室も避難スペースとして活用できる
- 介助者の負担・けがのリスクを減らせる
- 「行っても迷惑になる」という当事者側の心理的ハードルを下げられる
といった形で、災害時のバリアフリー課題に直接対応することができます。
平時のうちに備えておくことの重要性
段差解消機や車椅子用階段昇降機は、災害が起きてから慌てて用意するものではありません。平時のうちに学校施設に備えておくことで、実際に災害が起きた際にすぐに使える状態を維持できます。
また、これらの機器は災害時だけでなく、平時にも運動会や卒業式などで一時的に来校する高齢の保護者・地域住民の移動を支える役割も果たします。「災害時のための特別な設備」ではなく、「誰もが安心して学校を利用できるようにする設備」として位置づけることで、導入への理解も得やすくなります。
まとめ
学校は子どもたちの学びの場であると同時に、地域住民の命を守る避難所でもあります。段差や階段が「普段は問題にならない」からといって放置されていると、災害時には避難できない・避難所内で移動できないという、命に関わる問題として表面化します。
段差解消機や車椅子用階段昇降機は、大規模な工事を伴わずに導入できる現実的な備えの一つです。学校施設のバリアフリー化を検討する際は、こうした設備の導入も含めて、平時のうちから災害時を見据えた準備を進めていくことが求められます。