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2026/06/03

変形性膝関節症の方が「階段を使い続けること」の本当のリスク‐いす式階段昇降機という選択肢

「まだ歩けるから大丈夫」が危ない

「膝が痛いけど、まだなんとか階段を上り下りできています」
そう話される方は、とても多くいらっしゃいます。確かに、痛みに慣れながらも自力で動けていることは大切なことです。しかし整形外科医や理学療法士の視点から見ると、「なんとか使い続けている階段」こそが、症状を急速に悪化させる最大の原因のひとつだということが、多くの臨床データから明らかになっています。
この記事では、変形性膝関節症(以下「膝OA」)の方が階段を使い続けることで生じる身体的・生活的リスクを詳しく解説するとともに、リスクを根本から取り除く手段としていす式階段昇降機がどのような役割を果たすか、その具体的な優位性をご紹介します。

変形性膝関節症とは

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ることで骨同士が直接ぶつかり、炎症・変形・痛みを引き起こす疾患です。日本国内の患者数は約3,000万人(潜在患者含む)と言われており、特に60代以降の女性に多く見られます。
主な症状は以下の通りです。
初期: 動き始めに痛みがあり、少し動くと楽になる
中期: 動作中の持続的な痛み、膝の腫れ、可動域の制限
末期: 安静時にも痛みがあり、歩行や起立が困難になる
問題は、この病気が「使うほど悪化する」という特性を持っていることです。特に階段という動作は、その悪化を最も加速させる日常行動のひとつとして位置づけられています。

階段が膝関節に与える衝撃—数字で見るリスク

一般的な歩行では、膝関節には体重の約3〜4倍の負荷がかかるとされています。では、階段ではどうでしょうか。研究によれば、階段の昇降時に膝関節にかかる負荷は体重の約7〜8倍に達することが明らかになっています。体重50kgの方であれば、一段踏み出すたびに約350〜400kgの力が膝関節に集中していることになります。これを1日に何度も、何百段も繰り返す——それが「階段を使い続ける」ということです。

軟骨のすり減りを加速させるメカニズム

膝OAにおいてすでに薄くなっている軟骨は、通常の軟骨より衝撃吸収能力が大幅に低下しています。健常な軟骨であれば問題ない7〜8倍の負荷も、傷んだ軟骨には過剰なストレスとなり、細胞レベルでの損傷が蓄積されていきます。軟骨には血管が通っていないため、一度すり減ると自然治癒はほぼ期待できません。階段を使い続けることは、限りある軟骨の残量を少しずつ消費し続けることと同義なのです。

「階段を使い続けること」の5つのリスク

リスク① 症状の急速な進行
前述の通り、階段は膝への負荷が最も大きい日常動作です。定期的に階段を使い続けることで、軟骨の損耗が加速し、中期から末期への移行が早まることが知られています。「まだ歩ける」段階で適切な負荷軽減を行うことが、長期的な自立歩行能力を守ることに直結します。
リスク② 転倒・骨折リスクの増大
膝OAが進行すると、膝周囲の筋力低下・関節不安定性・痛みによる集中力の低下が複合的に起こります。この状態での階段昇降は、転倒事故の危険性を著しく高めます。高齢者の転倒による大腿骨頸部骨折は、その後の寝たきり・要介護状態への移行と強く関連しており、場合によっては生命予後にも影響します。痛みをこらえながらの階段使用は、日常的に「転倒ハイリスク状態」に身を置くことを意味しています。
リスク③ 痛みの慢性化・中枢性感作
繰り返し強い刺激(痛み)が加わることで、脳や脊髄の痛み処理システムが過敏化し、本来は痛くないはずの刺激でも強い痛みを感じるようになる「中枢性感作」が起こることがあります。階段での反復的な痛み刺激は、この慢性痛メカニズムを強化する一因となり得ます。
リスク④ 生活行動全体の縮小(活動自粛の悪循環)
「階段が怖い・痛い」という経験が積み重なると、外出・入浴・2階への移動といった行動を無意識に避けるようになります。その結果、下肢筋力がさらに低下し、膝への負担が増し、ますます動けなくなるという悪循環が生じます。「階段を我慢して使う」か「使わずに閉じこもる」か——どちらも本質的な解決策ではありません。
■リスク⑤ 手術・入院という大きな転換点の早期到来
適切なタイミングで日常の負荷を管理することで、人工膝関節置換術などの手術を先送りにしたり、術後の経過を良好に保つことができます。逆に、無理な階段使用を続けて症状が急激に悪化した場合、緊急度の高い手術が必要になる確率が上がります。手術そのもののリスク(麻酔・感染・血栓など)を考えると、生活環境の改善による負荷軽減はきわめて重要な予防策です。

なぜ「我慢して使う」が選ばれてしまうのか

多くの患者さんが階段使用のリスクを知りつつも使い続けてしまう背景には、いくつかの理由があります。「痛みに慣れると問題ないと思ってしまう」 実は、痛みに慣れることと軟骨の損耗が止まることはまったく別の話です。感覚が麻痺しても、関節内では損傷が静かに進んでいます。「2階に寝室・浴室があるため避けられない」 日本の住宅では、寝室やトイレが2階にあるケースが非常に多く、「使わないわけにはいかない」という現実的な制約があります。「手すりをつけたからもう大丈夫」 手すりは転倒防止には有効ですが、膝への負荷軽減にはほとんど貢献しません。手すりをしっかり握って階段を上れば、腕への負担は増えますが、膝関節にかかる7〜8倍の力は変わらずかかり続けます。これらの「仕方がない状況」を根本から変える選択肢が、いす式階段昇降機です。

いす式階段昇降機の優位性——5つの視点から

優位性① 膝への負荷をゼロにできる
いす式階段昇降機は、利用者がシートに座ったまま電動で昇降します。移動中に膝関節が体重を支える必要がないため、階段昇降による膝への負荷を実質的にゼロにします。これは手すり設置・杖の使用・リハビリ訓練では実現できない、昇降機固有のメリットです。
軟骨の損耗を止めることはできませんが、「毎日の階段使用」という最大の悪化要因を取り除くことで、現状維持・緩やかな経過観察が可能になります。
■優位性② 転倒リスクをゼロに近づける
安全機能が充実した現代の昇降機には、障害物センサー・シートベルトなどが備わっており、乗り降り時に立ち上がる動作を除けば、昇降中の転倒リスクはほぼゼロです。痛みをこらえながら一段一段を踏みしめる現状と比較すれば、安全性の差は歴然です。
■優位性③ 生活行動範囲を維持・回復できる
昇降機の導入により「2階に上がれる」という事実が回復します。これは単なる移動の確保以上の意味を持ちます。寝室・書斎・趣味の部屋・浴室など、これまで制限されていた生活空間が戻ってくることで、心理的な閉塞感が解消され、生活の質(QOL)が大きく改善します。
■優位性④ 介護負担の軽減
膝OAの方の階段移動を介助することは、介助者にとっても腰や膝への大きな負担となります。昇降機を導入することで、本人が自立して昇降できるようになり、介護者の身体的・心理的負担が軽減されます。介護離職や介護疲れの防止にも間接的に貢献します。
■優位性⑤ レンタルという柔軟な選択肢
「高額な設備を購入するのは…」という躊躇をお持ちの方も多いと思います。ケアリフトではレンタル形式を採用しているため、初期費用を大幅に抑えることができます。また、術後の一時的な利用・試用期間としての短期レンタルにも対応しており、「まず使ってみる」という段階から導入が可能です。
症状の変化・手術後の回復・家族構成の変化に応じて柔軟に対応できる点も、購入型にはない昇降機レンタルならではの優位性です。

「導入のタイミング」はいつが最適か

よく聞かれるご質問があります。「もっと悪化してから考えればいい?」という声です。答えは、「悪化してからでは遅い」 です。
理由は2つあります。
1つ目は前述の通り、軟骨は再生しないため、悪化した状態を元に戻すことはできません。昇降機は症状の改善ではなく悪化の抑制に機能するものです。ダメージが少ないうちに使い始めることで、より長く「昇降機があれば自宅で過ごせる」状態を維持できます。
2つ目は、症状が重くなるにつれて昇降機への乗り移り動作自体が困難になる場合があります。立ち上がりや座り込みがある程度できる状態のうちに導入することで、より安全に活用いただけます。
変形性膝関節症の診断を受けた段階、あるいは「最近、階段が辛くなってきた」と感じた段階が、導入を検討する最適なタイミングと言えるでしょう。

「使い続ける」ではなく「賢く使わない」という選択

変形性膝関節症の方にとって、階段を使い続けることは「頑張っている」ことではなく、静かに関節を消耗させるリスク行動です。痛みへの慣れ、生活上の必要性、「まだ大丈夫」という感覚——これらすべてが、適切な対処を遅らせる要因になり得ます。いす式階段昇降機は、膝への負荷をゼロにし、転倒リスクを減らし、生活の場を守り、介護負担を軽くします。手術を先送りにしながら自宅での生活を続けたい方にとって、これほど直接的に問題を解決できる住環境の改善策は他にありません。「まだ早い」ではなく、「今がちょうどいいタイミング」かもしれません。まずはお気軽にご相談ください。